・・・・・・・・・・・・寒い・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・暗い・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・寂しい・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・空しい・・・・・・・・・・・・・
・
・
・
何時思っただろう?
何回思っただろう?
何年思い続けただろう?
・
・
・
・
・
・
・・・・・・・・・・・・今日もまた1人・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・寂しい・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・私はずっと此処にいる・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・暗い・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・だから1人・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・恐い・・・・・・・・・・・・
・
・
・
何で、痛いの?
あの子が来るから。
誰が来るの?
私が来るの。
私が私に会いに来るの?
うん。
うれしいの?
分からない。
じゃあ苦しいの?
分からない。
楽しいの?
分からない。
・・・その子に来て欲しくないの?
来て欲しい。
自分が傷ついても?
うん・・・。
痛くても?
・・・うん・・・。
あの子があなたを殺そうとしても?
・・・・・・うん・・・。
でも、死ぬのは嫌でしょ?
・・・・・・。
じゃあ、殺せば?
えっ?
殺しちゃえば?
それは・・・ダメ・・・。
正当防衛だよ?
ダメ・・・。
あなたが死んだら、あの子はどうなるか知ってるんでしょ?
・・・・・・・・・。
ねえ、あの子はあなたを殺す意味を知ってるの?
・・・知らないと思う・・・。
・・・・・・あのね、私は今が好きなの。
・・・・・・。
前も悪くはなかったけど・・・昔は昔だから・・・。
・・・・・・。
私はあなた・・・いえ、『私』を守るわ。
・・・・・・。
だから・・・・・・。
・・・・・・。
・・・・・・ほら、今日もやってきた・・・。
・・・・・・。
私は行くよ?
・・・・・・。
・・・・・・それじゃあ行って来るね、『まい』。
分かった・・・。行ってらっしゃい、『まい』。
・
・
・
・・・舞・・・。
半年記念SS
相互リンク先限定公開Version
Multilateral Interpretation
「せいっ!」
静止された建物に動く者がいる。
月の光を受けたその者は、光を月光を反射させるもので『何か』と戦っている。
そう・・・何かと・・・。
「ぐっ!」
その者の身体が吹き飛ぶ。
まるで、空気の手に叩かれたように吹き飛び、壁に背中から叩き付けられる。
「っ!」
声にならない悲鳴・・・。
だが、その者に休まる時など今は無い。
すぐに息を整え、月光を反射させる美しい鏡を構える。
その鏡・・・世間では剣と呼ばれる物・・・を構えつつ、再び駆出す。
そして、一閃・・・。
「はっ!」
その眼差し、手に籠もる力、殺気・・・。
どれをとっても、明らかに本人は真面目だ。
だが端から見れば、明らかに頭がおかしいと言われるだろう・・・。
キンッ、キインッ!
金属音が打ち合う音が聞こえる・・・。
1人しかいないこの空間で、何故か1人以上の打ち合いがこだまする・・・。
「くっ・・・・・はあっ!」
相手の隙でも見つけたのだろうか?
剣を持った者は、一端バックステップを踏むと脇構えに構え直す。
そして、着地と同時に暗闇へ向かって横一閃!!
・・・・・・切った者が俊足だったなのか、切られたモノが遅速だっただけなのか・・・。
どうやら、決着はついたようだ・・・。
「・・・・・・逃げられた・・・。」
そう言い残すと、少女は再び殺気を放つ。
しかし、それは一瞬で・・・単に相手がいるかどうか確認しただけのようだ。
「・・・・・・・・・。」
全くの無表情で、剣を持ってきた布にくるむと、何事もなかったかのように少女は立ち去る・・・。
残ったのは、静寂を伴った夜の闇・・・。
ただ、月明かりだけは雲に隠れてしまい、校舎はより一層の闇に覆われていた・・・・・・。
・・・・・・今日も気づいてくれなかった・・・。
『まい』・・・。
おかえり、『まい』。
ただいま・・・。また・・・やられたわ・・・。
・・・大丈夫・・・?
・・・ふふ・・・。
・・・?
何でもないわ・・・。大丈夫よ・・・。
・・・・・・そう・・・。
・・・何時・・・何時気づくのかしら・・・。
・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・。
・・・分からない・・・。
・・・そう・・・。今日はもう休むわ・・・。
・・・・・・分かった・・・。
お休み・・・。
お休み、『まい』・・・。
・
・
・
・・・・・・お休み・・・舞・・・。
「ま〜い♪」
一際明るい声が教室に響く。
尤も、この教室にいる誰もがその声の主を知っている。
透き通った可愛らしい声・・・。
誰もが気になるはずの声に、誰もが気にとめない。
・・・・・・いや、気にとめようとしていないだけだろう・・・。
「・・・佐祐理・・・。」
いや、只1人だけ、その声を気にとめた人物がいる。
まあ、声をかけられた本人だから気にとめるのも当たり前なのだが・・・。
「・・・佐祐理、どうしたの?」
舞はジッと自分を見つめる佐祐理に戸惑ったような声をあげる。
表情は乏しくても、声の調子まで乏しくはない。
佐祐理はジッと舞の顔を・・・いや、机に乗せている舞の手を見ている。
「舞・・・此処怪我してる・・・。」
悲しそうにそれだけ言うと、舞の右手をとる。
確かに、完治されてはいるものの、すり傷の跡が2カ所ある。
舞も、佐祐理に言われて気が付いたようで、その傷をジッと見る。
「大丈夫・・・。」
舞はそれだけ言うと、スッと佐祐理の手から逃れる。
そして、佐祐理の視線から隠すように机の下に右手を隠す。
「・・・ま」
「転んだだけ・・・。」
舞はそう言って、佐祐理の言葉を遮る。
そんな舞に、佐祐理は悲しみの色を一瞬強く瞳に灯すが、すぐにその表情も和らいでいく。
「転んでも、手の甲にだけは傷は付かないよ?」
佐祐理はそう言って、悪戯っ子のような表情で舞に尋ねる。
「・・・・・・。」
佐祐理の言った通り、転んだら掌には傷が付くかもしれないが・・・さすがに甲にだけ傷が付く事はない。
そもそも、舞の運動神経の良さは佐祐理も知っている。
言い訳が得意では無い舞・・・。
さすがに本当の事を佐祐理に言うわけにもいかない為、、舞はフイッと視線を逸らす。
「舞・・・。」
佐祐理はそう言って舞の左手をスッと取り、両手で包み込む。
「舞が何やってるのかは、佐祐理は知らないけど・・・・・・怪我は・・・危険な事はダメだよ?」
佐祐理はそう言って舞から両手を離す。
舞としては、危険な事を止める事はできない・・・。
だからといって、答えないわけにもいかない・・・。
それは、佐祐理の悲しそうな顔を見るのが辛いからだ。
まさに板挟み状態の舞・・・。
佐祐理としても舞を困らせる事はしたくない。
先ほどの返答を求める事が、どれほど舞を困らせる事になるかは分かっている。
だから佐祐理は答えを求めない・・・。
ただ・・・只、言わずにはいられなかった・・・。
只、それだけの事・・・・・・。
「とりあえず・・・・・・今日も、沢山お弁当作ってきたからね♪」
先ほどまでの悲しそうな表情とは正反対の、明るい表情で佐祐理はそう言う。
舞は、そんな佐祐理をきょとんとした目でしばらく見ていたが・・・どうやら、舞も佐祐理の意図に気が付いたようだ。
「・・・うん。」
それだけ言うと、舞はニコッと微笑む。
それは子供のような純粋な笑顔・・・。
尤も、舞の表情からそれが笑顔だと受けとれるのは、佐祐理だけなのだが・・・。
佐祐理はそんな舞に、もう一度微笑む。
やっぱり、笑った舞は可愛い。
今までに・・・舞と出会ってから約2年、そう思った事が佐祐理には幾度かある。
だが、幾ら思っても思いすぎる事など無い。
もっと笑えば、舞の可愛らしさがみんなに伝わるのに・・・。
佐祐理は同時にそうも思っていた。
「ねえ、ま」
き〜んこ〜んか〜ん・・・・・・
間が悪いのか良かったのか・・・。
佐祐理の言葉は授業開始&休み時間終了の合図に遮られる。
「佐祐理?」
「あははは、また次の時間に来るね♪」
そう言っていつもの笑いを浮かべると、佐祐理は手を振って戻っていく。
舞も佐祐理と同じように、でも佐祐理よりは素っ気なく手を振り答える。
先ほど佐祐理が何を言おうと思ったのか・・・。
舞は気になったが、知りたいとまでは思わなかった。
それはきっと、自分には関係無いと思っているから・・・。
それはきっと、自分の倒すべき『モノ』に役に立たないだろうから・・・。
「・・・・・・授業。」
舞はポツリとそれだけ言うと、次の授業の用意を始めた・・・・・・。
・・・・・・ねえ?
?
楽しそうだね・・・。
・・・・・・。
本当なら、あそこにいたんだよね・・・。
・・・・・・。
・・・・・・羨ましくないの?
・・・・・・。
あなたは黙ってばっかりね。
・・・別に・・・。
はあ・・・もっと感情を出せないの?
・・・そんなの必要ない・・・。
・・・どうして?
・・・私はあそこに戻るから・・・。
確かに『私』はあそこに戻るわね・・・。
・・・・・・。
だけど、このままかもしれないわよ?
・・・・・・。
一生・・・いえ、あと数年で決着はつくわ・・・。
・・・・・・。
それは分かってるんでしょ?
・・・分かってる・・・。・・・だから・・・。
だから?
気づいてくれるのを・・・信じてる・・・。
・・・・・・どう見てもそんな気配すら見せないけど・・・?
・・・・・・。
・・・『あて』でもあるの?
・・・・・・。
あの子を待ってるの?
・・・・・・(コクッ)。
・・・・・・私を嫌ったあの子を?
違う。嫌ってない・・・。
じゃあ、どうして来てくれなかったの?
・・・用事が・・・あったのかもしれない・・・。
電話したよ?
家が遠かったのかもしれない・・・。
・・・それって、都合の良いように考えてるだけじゃない?
・・・違う・・・。
嫌ってない保証は?
・・・一緒に遊んでくれた・・・。
それだけでしょ?
・・・・・・それで十分・・・。
・・・・・・だから、あなたは・・・。
??
だからあなたは、何時までも『そのまま』なのね・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・まあ良いわ・・・。
・・・何処へ・・・?
『戻る』だけよ・・・。
・・・・・・・。
それは何時から?
何時から、それは始まったのかしら・・・?
ねえ・・・あなたはそれを覚えている?
忘れ去られたのは理由と記憶・・・。
残ったのは憎しみと宿命・・・。
そして・・・・・・・・・微かにしか覚えていない約束・・・・・・。
今日もお月様は変わらない・・・・・・。
何時もと同じように1つの影を生み・・・そして、見届ける・・・。
そう・・・1つしかない影・・・。
1つ・・・しか・・・・・・。
・・・・・・そっと耳を澄ませば、聞こえてくるのは『死』へのカウント。
じっと目を懲らせば、見えてくるのは長い髪を束ねている死神。
優しく話しかけようとすれば・・・伝わってくるのは激しい拒絶という名の感情・・・。
・・・・・・今日も始まる・・・。
死への誘いの洗礼が・・・・・・明日への絶望の洗礼が・・・・・・。
そして、始まる・・・・・・。
戦う意味を知らぬあなたとの戦いが・・・・・・。
『ねえ、あなたは何を求める為に戦うの?』
「はあっ!!」
右・・・左・・・右・・・・・・次ぎに突き・・・。
「せいっ!」
上・・・そこから振り上げ・・・・・・。
「・・・・・・。」
構えなおした・・・・・・来る・・・。
「・・・っ!ていっ!」
っ!!
右手が・・・・・油断した・・・。
ステップが変わった・・・ちゃんと勉強してるって事ね・・・。
「はあ・・・はあ・・・。」
息を整えてる・・・・・・・・・どうする?
今日はやばいかもしれない・・・。
ふう・・・とりあえず状況を確認しなくちゃね・・・・・・。
契れ飛んだ右手は・・・何処にもない・・・。
右手を見ても・・・見えるのは血なんかじゃない・・・。
只、肉である『モノ』と神経である『モノ』、骨である『モノ』、血である『モノ』、血管である・・・・・・。
本当なら血が勢いよく噴き出してもいいのに・・・。
本当なら血まみれの生々しい腕が転がっててもいいのに・・・。
本当なら右手から死ぬ程の激痛が走ってもいいのに・・・。
本当なら・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・ほら・・・こんな風に骨を触っても何も感じない・・・。
ほら・・・こんな風に肉をちぎってみても、何も感じない・・・。
ほら・・・ほら・・・ほら・・・ほら・・・・・・・・・。
ちぎっても、引っぱっても、叩いても、振っても・・・・・・私は何も感じない・・・。
・・・・・・・・・・・・あっ・・・また来る・・・。
「はああっ!!」
右・・・あっ、バランスが・・・。
「!はっ!!」
あっ・・・・・・・・・。
「せいっ!!」
倒れる・・・。
こんなヘマするなんて・・・・・・やっぱり、他事を考えてたせいね・・・。
ああ・・・胴体がすっぱり切られて・・・・・・あっ、骨まで切れてる・・・・・・あの剣、私には良く切れるわね・・・。
袋状の何だか知らないのも、破れてぶら下がってる・・・・。
切れた腸が垂れ下がって・・・・・・・・・・・・邪魔ね・・・。
・・・・・・やっぱり・・・ちぎっても音すらしない・・・。
ちぎった瞬間に、ちぎれた腸が消えていく・・・。
暖かいとすら感じない・・・血も滴り落ちない身体・・・。
これじゃあ、どっかのお化けみたいね・・・。
・・・どうせ、見えないけどね・・・・・・。
「・・・・・・。」
剣を向けてる・・・。
とどめを刺すのかしら?
今日は私1人だし・・・終わりかな・・・?
「・・・・・・。」
悲しそうな顔・・・。
そう・・・あなたは私が『死』になる事が悲しいの?
ふふ・・・聞こえないわね・・・。
「・・・・・・。」
迷ってるの?
そう・・・あの女の子ね・・・。
佐祐理・・・だったかしら?
あの子のおかげで、今のあなたがいるのね・・・。
「・・・・・・。」
受け入れてくれる?
・・・・・・あはは・・・何言ってるのかしらね・・・。
「・・・・・・。」
そう・・・それでいいの・・・。
迷わず・・・そのままおろしちゃいなさい・・・。
・・・『まい』・・・・・・また減っちゃうね・・・。
・・・・・・私は・・・一緒には戻りたくないわ・・・。
戻るのはあなただけで良い・・・。
私はきっと『害』なるから・・・。
・・・『舞』・・・『私』を受け入れてね・・・。
いつか・・・・・・うけい
「・・・・・・仕留めた・・・。・・・・・・今日はもう来なっ!?」
キュ、キュッ
「っ!!」
ブンッ!
「・・・・・・気のせい?・・・・・・今日は、帰ろう・・・。」
『きっと・・・いつか・・・『私』を受け入れて・・・・・・舞・・・・・・。』
誰もいない廊下。
誰もいない教室。
誰もいない階段。
誰もいない中庭。
誰もいないグランド。
誰もいない・・・誰もいない・・・。
そんな中、1つの影が校門へ向かって進んで行く・・・。
ふと、少女が振り返る。
その瞳に映るのは深い闇に照らされた校舎・・・。
その校舎に何を思うのか・・・。
少女は再び踵を返すと、校門へと歩いて行く・・・。
片手に布にくるまれた剣を持って・・・その身体を闇の中へと同化させていく・・・。
・・・空・・・。
重く・・・今にも落ちて来そうな雲・・・。
「雪・・・。」
誰かが呟く。
その呟きに答えるかのように、空から妖精達が降りてくる・・・。
白い・・・どこまでも白い妖精が・・・。
「・・・綺麗・・・。」
また誰かが呟く。
その声の主は、手を前に差し出し落ちてくる妖精を受け止めようとする。
・・・っが、どういう事なのか・・・。
その妖精は、手をすり抜けていく・・・。
文字通り、『すり抜け』ていったのだ・・・。
「・・・・・・雪・・・。」
またポツリと誰かが言った・・・。
声の主は天に近い場所で座っていた・・・。
見上げた雲は、手を伸ばせば掴めそうな・・・そんな雲だった・・・。
「・・・お帰り・・・。」
声の主・・・まいは、目の前の闇に向かってそう呟く。
いや、まいには見えているのだろう・・・。
今、まいのすぐ目の前いる『モノ』に・・・。
「・・・痛かったの?」
まいはまたそう問いかける。
その『モノ』からは返事がない。
只、無い身体を捻るかのように『何か』を動かす・・・。
尤も、それが分かるのはまいだけ・・・。
「・・・今まで・・・ありがとう・・・。」
何かを感じ取ったのか・・・その『モノ』に向かって礼を言う・・・。
まいはそれだけ言うと、その『モノ』に向かってそっと右手を差し出した。
「おいで・・・。」
そして、真っ直ぐな瞳でもう一度言う・・・。
「戻っておいで・・・『私』・・・。」
その呼びかけに、その『モノ』は素早く動いた。
まいが一瞬顔を歪ませる・・・が、それも一瞬。
すぐに、いつもの無表情になる。
そして、何事もなかったかのように、再び空を見上げる・・・。
「・・・待ってるから・・・。」
少女の瞳が金色に光る。
いや、光っているように見えるだけ・・・。
少女の瞳には落ちてくる妖精も、明るい暗雲も・・・今は映っていない。
見えているのは、何時かの刻・・・。
それは、希望という名の天使が居た頃・・・。
それは、今では『魔物』と呼ぶものが好きになりそうだった頃・・・。
それは・・・求めていた答えをくれた少年が居た頃・・・・・・。
「・・・痛い・・・恐い・・・暗い・・・寂しい・・・。」
少女は呟く。
「・・・悲しい・・・苦しい・・・辛い・・・。」
感情などはいっていない。
只、言葉というモノを列挙しているだけ・・・。
「・・・・・・私は『かわすみまい』・・・。」
そして、寒空の中少女は最後に一言呟いて、その場から消えた・・・。
「早く・・・早く私を受け入れてね・・・舞・・・。」
・
・
・
・
・
・
雪が降っていた・・・。
白い・・・真っ白な雪が降っていた・・・。
どこまでも・・・どこまでも・・・。
まるで何かを必死に隠そうとしているかのように・・・。
どこまでも・・・どこまでも降っていた・・・。
今日も明日も明後日も・・・。
きっと変わらない・・・変っていくはずが無い世界・・・。
ゆっくりと・・・でも、確実に滅びへと向かっている世界・・・。
今日もまいは静かに眠る。
風になびく金色の海に囲まれて・・・。
今日もまいは静かに夢を見る。
大好きな人との思い出の時間を・・・。
今日もまいは静かに祈る。
舞が自分を受け入れてくれるように・・・。
そして、今日もまいは静かに涙を流す。
失っていった幾つかの自分に対して・・・。
受け入れてくれない舞に対して・・・。
どうしたらいいのか分からなくなった自分に対して・・・。
・
・
・
・
・
・
1999年、12月。
1人の少年がやってくる・・・。
滅びゆく世界を止める為に。
堕ちてゆく少女を留まらせる為に。
かつての約束を果たす為に・・・。
そして
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・
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・
・
・
あゆという名の少女を、奇跡への生け贄とするために・・・。