まったり耳掃除







ある日の昼下がり。
ボーっと天井を見つめ窓際で寝そべる。
窓から入ってくる太陽の光が俺の眠気を誘う。

「祐一」

寝そべっている俺の顔を覗きこむ舞。
遮られた太陽の光が舞の髪の毛の隙間から洩れて眩しく照らす。

「どうした?」
「・・・・・これ」

舞が持っているのは耳掻き。
もしかして耳掃除でもしてくれるのか?

「耳掻きだな」

こくりと頷く舞。

「で、耳掻きがどうしたんだ?」
「・・・・・祐一に耳掃除してあげようと思って」
「いいのか?」
「別に構わない」
「じゃ頼む」

こくりと頷く舞。
でも何で急に・・・?

「で、俺はどうすればいいんだ?」

すると舞は座りこんで自分の膝を指差す。
少し顔が赤い舞。言葉に出して言わないワケがなんとなくわかる。
俺も敢えて追求せずに指を差された方へ頭を置く。その感触がなんとも気持ち良い。

「で、なんで深呼吸してるんだ?」

聞こえてくる深呼吸らしいものが気になるから訊いてみた。

「・・・・・人にするのは初めてだから」
「あ・・・そうなのか・・・」

ちょっと不安になる俺。
でも俺だって人に耳掃除なんてしたことはない。
緊張する気持ちはわかる。でもやっぱりちょっと不安。

「・・・・・祐一を傷つけるかもしれない」
「舞に傷つけられて死ぬなら俺は幸せ者だ」
「・・・・・耳掃除で人は死なない」
「それもそうだな・・・じゃ頼むぞ」

折角、舞が耳掃除をしてくれるんだからな。

「・・・・・始めるから」

ゆっくりと中に進入してくる異物(?)
ごそごそという音が聞こえてくる。

「・・・・・痛くない?」
「痛くない・・・・・と言うよりも気持ち良い」
「次はちょっと・・・・・痛いかもしれない・・・・・」

その言葉を聞いてヒヤッとする。
どうも舞にそう宣言されると緊張する。

「・・・ん」

ゴソッという音と共に耳掻きが引きぬかれる。

「・・・・・ちょっと手強いのがいた」
「表現がちょっとおかしくないか?」
「こっちの耳はもういい・・・今度は反対」

体を起こし体制を変える。
俺は舞の腹部を見つめるような感じになった。
舞の服の匂いが俺の鼻を和らげる。相変わらず気持ち良い。

「・・・・・始めるから」
「ああ」

さっきとは反対の耳に異物が侵入してくる(?)
もともと器用なせいか特に痛みもなく気持ちが良い。
気持ち良さのあまりに眠気がしてくる。が、それも長くは続かなかった。

「祐一・・・終わった」
「そうか・・・ありがとな」

こくりと頷く舞。
実はもう少しこうしていたかった。
気持ち良いのもそうだが、舞に膝枕されるというのも結構良かった。

「じゃあ、お返しに俺が舞に耳掃除してやろう」
「・・・・・別にいい」
「まぁ、そう言うなって」

そう言って膝を低くして座る。
暫く舞はジーっと見て決心したかのように俺の膝に頭を乗せる。
こころなしか舞の顔が赤かった。

「実は俺も初めてなんだ」
「・・・・・やっぱりいい」

そう言って顔を上げる舞。
俺はその顔を押さえて再び膝の上に。

「安心しろ、優しくしてやるから」

俺の膝の上でこくりと頷く舞。
ちょっと言ってることが変なのは置いていて・・・。

「祐一の膝・・・硬い」
「仕方ないだろ男なんだから」
「・・・・・男はみんな硬いの?」
「ま、まあ硬いと言えば硬いな」

またもや変な会話だが気にしないでおこう。

「それじゃ始めるぞ」

俺の膝の上でこくりと頷く舞。
ちょうど太陽の光が耳の辺りを照らしていて見やすい。
が、舞の耳はきれいだった。特に耳垢らしいものはなくきれいだった。
とりあえず逆の端に付いている綿で擽ることに。

「ひゃ・・・」
「ん、どうしたんだ?」

白々しく訊いて見る。

「・・・・・くすぐったい」
「そうか、じゃあもう一回」

耳の中で綿を回す。
その度に舞が情けない声を出して跳ねる。
ちょっと可哀想な気がしてきたからこれくらいに・・・。

「よし、じゃあ反対だ」

こくりと頷き顔を反対側に向かせる舞。
ハラッと髪の毛が揺れては床に落ちる。

「じゃ始めるぞー」

こくりと頷く舞。
やっぱりこっちの耳もきれいだった。
ちょっと耳の中をきれいにしておしまいと。

「終わったぞ」
「・・・・・ありがとう」
「結構、きれいだったぞ」
「・・・・・先週、佐祐理にしてもらったから」
「ああ、どうりでな・・・まあ、いっか」

そういう事を先に言わないところが舞らしい。

「で、なんで起きないんだ?」
「・・・・・もう少しこのままでいたい」

顔を少し赤らめながら言う舞。
そんな舞を見て正直、可愛いと思った。

「俺は別に構わないぞ」
「・・・・・じゃあ、そうしていて」
「わかったよ・・・」

五分もしない間に寝息を立てて眠る舞。
そんな舞の髪の毛を撫でて、舞を膝に乗せたまま俺も仰向けになって眠る。

暖かい光が差し込む中、昼は過ぎて行った。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
2001/10/30
桜香雪那さんに相互リンク記念に送ったSSです。
やっぱり、ほのぼの系が気軽に書けていいです。
私もこんな風に舞に耳掃除してもらいたいものです(w
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――




Back GiftPage