日の当たる場所
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「浩平、朝です・・・起きてください」
朝の軽い微睡の中、耳元に微かな透明な響きを感じる・・・
やって来た遅い春・・・だが、空気は少し肌寒い。
冷える朝はもう少し抜ぬくぬくと布団に入っていたい・・・
「浩平起きてください・・・」
今度は少し大きめの声で囁きを感じた。
今日は日曜日だったはず・・・
いつもは、茜と学校に行くために、寝ざましをセットして置くのだが、
それも作動する様子がない。
長森にはもう起こさなくていいと伝えてある。
もう、自分に甘えるのはやめた。
「浩平・・・」
少しうんざりしてきたようだ。
俺はいい加減起きようと、大きなあくびをしながら目をこする。
「おはよう・・・茜・・・こんな時間にどうしたんだ?」
「浩平、今日は公園に桜を見に行くと約束した日です」
「それは覚えているぞ」
「よかったです・・・」
大事な約束だいくら何が何でも忘れるはずがない。
「しかし、その約束って、10時じゅあなかったか?」
「そうです・・・」
「時計が壊れているか、俺の幻覚じゃなければ時計は8時14分を指しているんだが・・・」
「合ってます・・・」
「じゃあ何故・・・・・・そうか!、わざわざ一緒に寝るために、早く来たんだな!」
俺は布団の中で転がり、ベッドの端によって、
空いたスペースをかけ布団の上からパンパンと叩く。
「狭いベッドですが・・・」
「違います・・・」
意味を察して。
頬を赤らめながら否定する。
「ただ、待ちきれなくって来てしまっただけです・・・」
二人ともそれっきり赤くなって口をつぐんでしまう。
時計の針だけが響く、変な朝の沈黙。
「私、外で待ってます」
なんだかそれはとてもくすぐったい時間だった・・・
 
 
 
 
 
 
 

思い出の公園。
そこには桜が咲き乱れていた。
とわいっても、桜の樹の本数自体はあまり多くはない。
花見の名所というようなとこにいくと、
多くの桜の樹があり、その華やかさ、花の多さに圧倒されてしまう。
しかし、その場所の桜は一本、一本まばらに咲いており、
その一本、一本に素朴さ、強さといった不思議な魅力を与えている。
華やかさや、華麗さといった類だけが美しさだけではないと浩平は思う。
そんな桜の一つの傍らに浩平はいた。
「浩平、少し早いですが、お昼にしましょう」
「ああ」
早速、脇に置いてあったバスケットの中身を広げだす。
綺麗に整列しているサンドイッチが顔をみせる。
「でわ、頂きます」
俺は、綺麗な整列をくずすのが勿体無いと思いながら、
そのうちの一つを取って食べ始める。
取ったのはハムサンドだった。
ハムとレタスのハーモニーがおいしい。
「どうですか?」
「ああ、とてもうまい」
「よかったです」
「でわ、私はこれを・・・」
そういい、彼女もサンドイッチを食べ始める。
「おいしいです」
「でわ、俺はもう一つ・・・」
サンドイッチ列の中からまた一つ取り出す。
「う・・・」
「どうしました?」
半分位食べて俺の口が止まった。
「このサンドイッチなにサンドだ?」
ハムサンド、卵サンド、チーズサンドなどいくつ物サンドイッチが頭を駆け巡ったが、
これに該当する味が一つも存在しない。
第一、サンドイッチにしては・・・
「試しに蜂蜜を入れてみました、ですから、あえていうなら蜂蜜サンドです」
ぐはぁ・・・やっぱり・・・
蜂蜜サンド、
それはサンドイッチというより甘すぎる菓子パンに近い気がする・・・
「私もさっき食べましたが、レタスが良くあっておいしいです」
さすがだ、茜、さすがあの激甘ワッフルを食べて、
「おいしい」と言っただけある・・・
俺にはとても食べられそうにないぞ・・・
「茜、他にどんなサンドがあるんだ?」
恐る、恐る聞いてみた。
茜が不思議な顔をする。
俺にはそっちの方が不思議なんだが・・・
「こっちの方が、卵サンドと、ハムサンドで、あとのは蜂蜜味のです」
手でラインを指し示してくれた。
俺はそのラインを目に焼き付けた。
「サンキュー、茜」
俺は無難に今度は卵サンドを取ってみる。
ぐはぁ・・・一つ蜂蜜サンドが移動していたみたいだ・・・
 
 
 
 
 
 
 

「ふ〜ご馳走様でした」
「ご馳走様でした」
「どっこいしょっと」
「・・・・・・」
今、俺は茜の顔を見上げるようにして、
茜の膝の上に頭を置き、仰向けになっている。
いわゆる、膝枕というやつだ。
「・・・浩平・・・恥ずかしいです」
「しょうがないだろう、ここが一番よく眠れるんだ」
「理由になっていません」
「そうか?」
「はい」
「じゃあ、こうしていると茜の顔がずっと見ていられるから、じゃ、駄目か?」
「・・・・・・(赤面)」
「どうした?、茜」
「・・・浩平ずるいです」
「まあ、いいじゃないか」
穏やかな時間、
目を開けば空と雲、そして茜の顔が見える。
こうして見るとなんだか、世界は俺と茜、二人しかいないように見える。
「空が綺麗ですね」
「ああ・・・」
茜の顔を今一度見てみる、
その顔はやはり美しかった。
 
 
 
 
 
 
 

浩平・・・
 

あなたは「えいえん」を求めました・・・
 

あの人もまた・・・
 

私には分かりませんでした・・・
 

何故みんなそんなに「えいえん」を求めがるのかを・・・
 

でも・・・
 

あなたと出会ってなんだか分かった気がするんです・・・
 

今・・・
 

この・・・
 

あなたを感じられていられる瞬間・・・
 

ずっと、ずっと、ずーーと・・・
 

こうしていたいです・・・
 

永遠の盟約者はあなたにキスをしたそうですね・・・
 

なんだか・・・妬けちゃいます・・・
 

私も・・・
 

今、私の膝の上で寝ているあなたの顔に・・・
 

約束のキスを・・・
 

していいですよね?浩平・・・
 

ずっと愛してます・・・浩平・・・
 

END
 
 
 
 
 
 



あとがき
 

雪那さん10000HITおめでとうございます〜
御依頼ありがとうございます〜
え〜と、御依頼してもらいましたのに、
書き上げるのが遅くなってしまいすいませぬ・・・
でも、そのぶん本人としては満足のいく作品になりました。
なんか気がついたら季節が正反対になってましたけど(笑)
ここまで、甘く書いたのは久しぶりのような気がします。
でわまた〜
 

                                                     十月十二日 北 誠司


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