〜意外な事実〜











「兄くん……頼みがあるんだが……。」

「別に構わないけど……新しい薬の実験台とかはかんべんな。」

そう言うと千影は拗ねたように顔をそらして、

「む……兄くん…私はそんな事しか出来ないと……」

「思ってません。分かってるよ、何か大事な用だってことぐらい。」

「じゃあ、どうして………」

「そういうときの千影ってちょっと意地悪してみたくなるんだよ。」

「兄くん………」

いや、そんな目で見られてもな……
それに第一、俺はまだ用事に付き合わないとは言ってないぞ?

「いじわるだよ……。」

こういう時の千影は妙に可愛い。
そしてこういう時の俺の行動は決まっている。

きゅっ……

「やっぱこれに限るな♪」

「兄くん……」

うわ、耳の先まで真っ赤になってるよ…
いつもの事なんだからもうちょっと慣れてもいいと思うんだけどな…
ま、そこが可愛くて好きなんだけど。





「ほら、行くぞ。」

「あ、待ってよ兄くん………。」

千影は明るくなった。
あの時から……。
あの日、俺と千影が結ばれた日から……。

「そういえば一体どこに行くんだ?」

「…ペットショップ……。」

「普通の、だよな?」

「今日は…そうだよ……。」

いや、何も照れなくてもいいと思うぞ?
まぁ、確かに千影が「普通のペットショップに行きたい」なんて言ったのは今日が初めてだけどさ。

「兄くん……顔が笑ってる……。」

「すまん。あまりに唐突過ぎたのでつい…な。」

「ふぅ……いいよ、私にはどうせ普通のお店なんて……似合わないだろうからね……。」

「いや、だから拗ねるなって……。」

「拗ねてなんか無いよ……」

どこがだよ……。
頬まで膨らませて拗ねてるじゃないか……。

「悪かったって……。」

「知らないもん……。」

だめだ、完全に拗ねてる……。
ちょっと悪ふざけが過ぎたな……。

ちゅっ……

「あ、兄くん!?」

「大好きだよ、千影。」

「もう………。」

機嫌、直してくれたみたいだな……
また、昔に戻ったらヤだからな……。

「それよりほら、ここだろ?」

「あ、うん……。」

中に入ると、あらかじめ買うものは決めていた様子で千影が歩いていく。
俺はそれについて行った。

「あ…兄くん、この子がいい……」

「子ネコ……?」

そう言って千影が目を輝かせるその先には、小さな子ネコが小さな寝息を立てて眠っていた。

「かわいい………。」

あ〜あ…だめだ、絶対買わないと帰らないぞ、こいつ……。




「ありがとうございました〜。」

妙に間延びした口調の店員に見送られ、俺と千影は帰路についた。

「なぁ千影?」

「なぁに、兄くん……?」

「なんで俺が子ネコを抱いていてお前が飼育道具を一式持っているんだ?」

「そ……それは……」

「普通逆だろ?」

「うう……そうだけど……」

どうも千影の様子がおかしい。
絶対何か隠してるな……。

「家に着いたら……教えてあげるよ……。」

「分かった。家に着いたら…な。」

「ごめんね……兄くん……。」





帰宅後。

「ほら、家に着いたぞ。さっき言ってたこと、教えてくれよな。」

「……笑わない?」

「ああ、約束する。」

「私ね……実は……こういう事なんだ………。」

そう言って、ひょい、と子ネコを抱く。
と、みるみるうちに千影の鼻が赤くなって、目がウルウルしてきた。

「千影お前、ひょっとして……。」

「うん…ぐすっ……私…ネコアレルギーなの……くしゅん。」

既にくしゃみまで出始めて、涙をぼろぼろこぼしている。
それでも「かわいい…」と言って子ネコを抱いているのを見ていると、とても止める気にはなれなかった。

「不運だな……こればっかりはどうしようもないぞ……。」

「うん……くしゅん……だから今まで我慢……ぐすっ…してたんだよ……くしゅん……。」

「ひょっとして俺と一緒だから思い切って買ったのか?」

「そうだよ……。」

おいおい。
ひょっとして俺はずっとネコアレルギーの千影がネコを抱いて涙目になってるのを見てなきゃなのかよ?
……でも可愛いからいいか。あんまり良くない気もするけど。

「千影。」

「え?なに、兄くん……?」

「ずっと…ずっと一緒にいような。そいつも一緒に……。」

「うん……。あ、でもこの子名前…ぐすっ……あるよ?」

「あるのか!?」

買ったばかりの子ネコに!?

「『ライ』って言うんだよ……。」

「……ひょっとして、俺とお前の文字から取ったのか?」

「うん♪」

普通はきづかんぞ、そんな名前……。
俺の昌(あきら)と千影(ちかげ)の名前からか……。
確かに千影の『影』は『エイ』って読むからな……。
しかしそんな事にも関わらず気づく俺も俺か……。
あ、ライが俺の所に来た。

「ねぇ、兄くん……。」

「なんだ?」

「これからも…よろしくお願いします♪」

「ああ、こちらこそよろしくな。」

「にーにーにー♪」

「ライもよろしくって言ってるよ♪」

「ああ、よろしくな、ライ……って登ってくるのかよ、お前は……。」

なんだかこれから先がにぎやかになりそうだ。
それでも俺は千影がいるからこそ歩いていける。
隣でいつも優しく見守っていてくれるこいつがいるかぎり……ずっと………。




〜あとがき?〜


短いですね、はい。
さすが構想&執筆時間40分作品。
もっと深い内容にしたかったかも………でもその為にネコの勉強する気にはなれず。
でも……モデルがいるって書きやすいね♪(マテ

千影ちゃんはなぜかネコアレルギー……なんだよね。
でもネコがだ〜い好き♪
まるで誰かさんそっくり♪
ちなみにライちゃんは種類が決まってません。
執筆者それほどネコに詳しくないので……。

あ、ちなみに『千影ちゃんが10歳ぐらいじゃないか?』と言う突っ込みは絶対受け付けません(笑)
だってそのぐらいの設定で書いたんだし………。
でも、10歳じゃないんだよね……。話の内容だと。
(……17〜19歳ぐらい?)
え〜っと………(汗
それではっ☆
(あ、逃げた……)







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