「東方プロジェクト」 二次創作

 このテキストは脳内設定という名の稚拙で我儘な捏造と改竄で綴られています





 壁に耳あり、スキマに紫。
 スキマはいつだって唐突だ。

「霊夢ー、美味しいお酒を手に入れたの。一緒に飲みましょう」
「あー。まあ、いいんだけど。
 とりあえず、座卓から首だけ生やすのはやめて欲しいかなぁ」

 何にせよ、博麗神社は今宵も概ねまったりだった。





 sweet sweet night?





 スキマからにゅるんと這い出し、
 いままで自分が居た“そこ”から杯と一升瓶を取り出す。

「まあまあ、駆けつけ三杯」
「いや、それ意味が違うし」

 苦笑しつつ杯を受け取り、紫の酌を受ける霊夢。
 小さく一口、舐めるように飲む。

「あ、おいしい…」
「ふふ、秘蔵の大吟醸よ」
「そんな上物、私なんかに飲ませちゃっていいの?」
「美味しいお酒は、好きな人と飲めば更に美味しくなるものよ」

 しれっと答え自分の杯を取り出す。
 手酌で注ごうとすると、

「あ、待って」
「ん?なあに?」
「お酌ぐらいはしてあげるわよ。
 ご馳走になるだけじゃ悪いし」
「あら、嬉しいわ」

 差し出した杯に、とくとくと注がれる透んだ色。

「乾杯しましょうか?」
「いいけど、何に?」
「うーん…。霊夢と私の永遠の愛に、なんていうのは?」
「何よそれ、らしくない」
「なんとなく、そんな気分なのよ」

 どんな気分よそれは、と思ったが、
 今夜はそれもいいかもしれない、と思い直す。

「なら、私と紫の永遠の愛に――」
「死でさえも分かてぬ想いとなるように――」
「「乾杯」」

 軽くぶつけた杯が、乾いた音をたてた。





「それにしても」
「ん?」
「神社(うち)を結界で囲んで、何をしに来たのかと思えば…」
「あら、やっぱり気付いてたのね」
「これだけ固く結ばれればねぇ」
「だって、こうでもしないとふたりきりになれないもの」

 向けられた眼差しは潤み、艶やかな色を湛えている。
 それは、はたして酔いのせいだけだろうか?
 
「今夜は霊夢を独り占め」

 しなだれ、寄り添い、霊夢の胸元に頬を寄せる。

「誰にも邪魔されず、甘えられる」

 その得体の知れなさで、疎まれることの多い彼女の、
 霊夢の前でだけ見せるひどく少女らしい一面。

 それが、自分だけに与えられた特権のように思えて。

 だから、
 こんなとき、霊夢は紫をそっと抱きしめて、
 そして紫に抱きしめられる。

「甘々ねぇ」
「甘々よぉ」

 くすりと微笑みあい、
 そして、
 重なる唇。

 甘い筈のキスは、けれど、辛口のお酒の味がした。




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