「二人の時間」
季節は秋。
目が眩むような紅葉に包まれる季節。
木々は様々な色のドレスをまとっていた。
そんな中、俺と名雪は二人で歩いていた。
名雪の部活が休みの為、俺達は二人で帰る事にした。
名雪「ねぇ、祐一」
祐一「なんだ、名雪?」
それまで静かに紅葉をみていた名雪が突然口を開いた。
名雪「花火…したいな」
祐一「いきなりだな…どうかしたのか?」
名雪「別に深い理由は無いけど…」
そう言って、名雪は泣き笑いの表情を浮かべた。
祐一「………」
名雪「あ、無理だったらいいんだよ。急にそう思っただけだから…」
祐一「わかった」
名雪「え…いいの?」
祐一「まかせとけって。…何がいい?」
名雪「え〜と、どういう意味?」
祐一「花火だよ。どんな種類のが好きなんだ?」
名雪「…わたしもいっしょに行っていい?」
祐一「いいけど…俺1人でも買えるぞ」
名雪「だめ?」
祐一「…いいぞ。じゃあ、行くか?」
名雪「うんっ!!」
俺達は、花火を買いに商店街に向かった。
そして……夜。
パチパチパチ。
シュワーーーー。
時期外れの花火の音が静かな闇に響く。
闇を切り裂いて、様々な光と煙が辺りを照らす。
名雪「…………綺麗だね」
祐一「…………そうだな」
…本当に綺麗だ。
名雪の姿が。
赤や青、黄色といった光に照らされている名雪の姿は、幻想的な雰囲気を作り出していた。
思わず見とれる俺。
名雪「…あっ」
名雪が小さく声を上げる。
名雪「…花火、終わっちゃった」
名雪「祐一、次の花火……祐一?」
祐一「…………」
名雪「祐一〜」
祐一「…………」
名雪「祐一っ!!」
祐一「わっ!! な、なんだ!?」
俺が我に帰ると、名雪は呆れた顔をしていた。
名雪「なんだじゃないよ、祐一。さっきから呼んでるのに、全然返事しないんだもん」
祐一「…ごめん」
名雪「どうしたの? なんかあったの?」
祐一「いや……ただ名雪の顔に見とれていただけだ」
俺は言ってから、口をふさいだが、遅かったようだ。
名雪の目は潤んでいて、今にも泣きそうだ。
名雪「祐一〜、うれしいよ〜」
そういいながら、名雪は俺に抱きついてきた。
祐一「え、え〜と、だから……ま、いっか」
幸せそうな名雪の顔を見たら、何もいう気力も無くなった。
俺は抱きついている名雪の髪を撫でる。
名雪はくすぐったそうにしていたが、俺のされるがままになっている。
また、花火でもするか…。
名雪「…祐一、また花火がしたいね」
祐一「…俺もそう思う」
名雪「………」
祐一「………」
言葉は要らない…。
名雪「…クシュンッ」
祐一「中に入ろうか?」
名雪「うん…」
今俺達は一つになっている。
俺は願う…。
この時間がいつまでも続くように…。
いつまでも二人で歩めるように…。
そして…。
俺の隣りにいる少女が笑顔でいる事を…。
名雪「祐一っ」
あとがき
あとらす「どうでしたか? 今回のお話しは?」
祐一「ありがちだな」
あとらす「…………」
祐一「…………」
あとらす「………………」
祐一「………………」
あとらす「うわぁぁぁぁぁぁん」
祐一「あっ、走って行った…」
祐一「あ〜あ、まだあとがきの途中なのに…」
あとらす「それではっ、また会いましょう!!」
祐一「うをっ!! いつの間に戻ってきたんだっ」
あとらす「さよ〜なら」
祐一「…おい、無視するなよ」
あとらす「さよ〜なら〜」
祐一「…(怒)」
ゲスッ、バキッ、ドカッ。
その場には、薄汚れた雑巾が落ちていた…らしい。
あとらす「…また、このパターン…がくっ」
めでたし、めでたし。
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