勝手気ままなHONNY BEES  そのに




「・・・これって。」
香里は手元のメモ(『各々の頻出場所』)をみながら、あきれ返っていた。
それを栞が、横から覗きながらいう。
「あ、これって「元」三年の倉田先輩と川澄先輩のことじゃないの?」
香里は、短く溜息をついた。
この学校にいない人間をどうやって探せというのだろうか?
まったく、無茶にもほどがある。
あきれながらも、今度はもう1枚渡された別のメモを見ながら、今度は二人そろって溜息をついた。
「これじゃ・・・一旦学校の外に出ていかなきゃいけないね。」
「あきれた。いくら頻出場所とはいっても、大学にはいってそんなにゆっくりしている暇があるとおもってるのかしら?」
「・・・祐一さんのことだから、きっと何か心あたりが有るんでしょうけど・・・」
栞のいうことももっともである。
香里は己にそういい聞かせて、学校の外へ足を踏み出した。
「しょうがないわね・・・」
「行こうか。おねーちゃん。」
「そうね。」


二人のアパート前にて、香里と栞はたち尽くした。
「・・・・・・・・」
「・・・・・おっきいね」
大学に行って下宿しているというので、どうせ二階建ての小さなアパートに二人暮しと思っていたのだが・・・
「あまかったわね。」
「倉田さん、お金持ちだもんね・・・」
見上げることの出来る程の、高級そうなアパートに二人暮し?
親と一緒にでも住んで無い限りむりだわ。
と香里は心の中だけで反芻した。
「・・・・行きましょう。・・・って何号室?」
「えっと・・・1301号室だって。」
「OK。」
そういいながら電子ロックのパネルをポンポンポンとたたく。
手前の液晶にルームコールのマークが点灯する。
しかし、しばらくまっても誰も出る気配はなかった。
「ほらみなさい。大学生がこんな時間に帰ってる訳が無いのよ。」
と、さっさと見切りをつけてきびすを返そうとしたその時、大きい液晶モニターに相手の顔が映った。
すっと細く、さわったら切れそうな雰囲気の女性。
「・・・・だれ?」
その女性(ひと)は、短く率直簡潔に質問してきた。
「あ、あの・・・」
栞がそれに対応しようといいあぐねていると、香里が後ろからすかさず言葉をつなげた。
まったく、姉としての立場がないわじゃない・・・・栞。
香里は、そう心中でぼやきながら話しをすすめる。
「美坂香里といいます。同じクラスの相沢君からの伝言と招待状を届けに来たんですが。」
「・・・祐一の?」
「はい。そうです。」
「・・・・佐祐理。祐一の知り合い。」
どうやら、二人とも自宅にいるようだ。
でも、今日は休日だったかしら・・・・
今日は土曜日・・・・か。
え?


???・・・確か9月23日は『祝日』じゃなかったっけ?なんであたし達は学校にいってるのよ・・・
『それは作者の都合です。気にしたら負けです。』
・・・勝手に世界観を変えるとはいい度胸ね・・・
『あ、あう!・・・次元を超えて投石しないで!!』


ま、まあ・・・大学生は大抵、土曜が休みである。
それでなくても、文系には休みが多いので別段不思議なことは無いのだが。
『入ってもらって〜。今、手が離せないから〜』
「・・・はちみつくまさん。」
しばらくして、がちゃんと音がして扉のオートロックが解除された。
「・・・・入って」
女性は終始言葉数が少なかったが、どうやら悪意は無いらしい。
香里は、自分の考えていた人間像を改めなおした。


「祐一さんから招待状?」
「・・・祐一」
「あ、舞・・・これって秋子さんの誕生日会の招待状だ・・・おー」
「・・・・それ、佐祐理の台詞じゃない・・・」
ボケた佐祐理を、舞が無表情でつっこむ。
うむ、ボケの具合は悪くない。だのなんだのと舞達がお互いのボケを研究しているのを横目でみながら
せめてものおもてなしにと頂いたバニラアイスを、まるで幸せの絶頂に浸るかのような顔をしている・・・栞。
まあ、こんなものかな?
香里は、窓の外を見ながらぼんやりと考えをまとめた。
どうやら、二人は秋子さんを知っているようだ。
これならば説明する必要も無いだろう。
「で、どうします?出席しますか?」
事情を察するなり、やや事務口調で話を持っていこうとするあたり、香里の性格らしかった。
「舞、出席するよね〜?」
「・・・・はちみつくまさん」
「???」
美坂姉妹は頭にはてなを並べた。
はちみつくまさん・・・ってなに?
と言う顔をしている。
それに気付いた佐祐理がフォローをいれた。
「あはは〜舞の『くまさん』は『はい』ていう意味なんですよ〜。かわいいでしょう〜〜?」
随分と間延びしたフォローでではあったが・・・・。


しばらくの談笑のあと、美坂姉妹はそのアパートを後にした。
「これで二人は確実ね。」
ぷるるるっ
香里の携帯が鳴った。
ワンポイントとしてつけられた、かわいいウサギのストラップが小さく揺れる。
祐一には・・・・


『鬼の目にも涙と、同じくらいに以外だな。』


といわれたのだが、自分では結構気にいっている。
(その後、二日ほど祐一の消息は途絶えた。)
液晶には『北川 潤』と表示されていた。
どうやら、北川の方からの首尾の確認のようだ。
「はい、なにかしら?」
『天野さんと久瀬先輩、それから斎藤をGETしたぞ。そっちはどうだ?』
「任された先輩方は、さっき約束を取り付けてきたわ。・・・それにしても・・久瀬って・・・」
香里は、あからさまに眉を寄せた。
『ああ、『あの』久瀬先輩だ。』
「なんで、あの人まで呼ぶ必要があるの?」
『相沢と久瀬先輩は永久(とわ)のライバルなんだ
燃えるシチュエーションじゃないか!!
くー、相沢のヤツ。俺に黙ってやがって!』
「・・・・・どんなライバルよ。それは」
わざわざ、向こうに聞こえるように溜息をつくと、無常にもぶつっと通話を切った。
やっぱり、同種族よね。北川君も・・・。
栞に悪影響が出ないうちに、ヤっとこうかしら・・・あの二人。

続く。



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